我々の棲む宇宙はどのような姿をしているのでしょうか?またどのような成り立ちを経験してきたのでしょうか?そもそも我々という存在は何なのでしょうか?これらの基本的な問いかけは人類の長い歴史の中で常に問いかけ続けられてきました。そのすべてに同じ方法論で答えを探すことはできませんが、我々の研究室では自然科学、特に物理学の知見を用い、観測や高性能なコンピュータの助けを借りて、これらの問いに立ち向かっています。

First Stars

宇宙最初期における星形成への輻射場の影響

宇宙の誕生から約1億年後、宇宙で最初の星が輝き始めた。これまでの理論的研究からこれらの星々は非常に重く、かつ明るく輝いていたと考えられている。その結果、星の周囲の物質は電離され、かつ数万度に加熱される。そのため、初代星周囲の領域では新たな星の形成があまり起きないと考えられてきた。我々の研究では、輻射流体シミュレーションの手法を用いて、この星形成の阻害プロセスを計算し、定量的に評価した。その結果、それまで考えられてきたよりも、輻射のフィードバックは破壊的ではなく、輻射に対する自己遮蔽の効果によってかなり緩和されることが明らかになった。

動画の左の領域では星の卵が重力収縮していく様子を表しているが、画面の右から輻射が入射して左のガス雲の表面が光蒸発していく様子を表している。ドットは流体粒子(SPH)を表し、その色は温度を表す。赤い部分は1万度以上の高温になっているところを表している。この計算の場合には、最終的に重力収縮するコアが生き残り、新たな星が形成されている。

参考文献

Galaxies

極紫外線背景放射場の銀河形成への影響

初期宇宙で銀河が生まれる時代には、クエーサー(正体は巨大ブラックホール)と呼ばれる天体や若い銀河から銀河間ガスを電離する極紫外線背景放射場が形成されていた。この放射場は銀河の材料となるガスを1万度程度に加熱するため、その形成に重大な影響を与える。

2つの動画は形成途上の太陽質量の10億倍の質量をもつ銀河と0.1億倍の質量をもつ銀河が極紫外線背景放射場に曝された場合の進化の様子を表している。比較的重い銀河の場合は電離によってガスの細い構造が無くなるものの、全体としてはかなりの割合が星(青)になり銀河の形成が進む。我々の計算によるとこの質量の境目は1億倍の太陽質量程度のところにある。これによって標準宇宙論で議論されている、「小さい構造ができすぎる問題」が解決する可能性がある。

銀河形成への紫外線の影響

我々の棲む銀河はこのような銀河よりも後の時代に形成されたと考えており、質量は太陽の〜1000億倍に達する。このような大銀河の形成シミュレーションを数値的に正しい分解能で行うことは困難である。そこで我々は、形成をすべて追うのではなく、銀河ガス円盤があったときにそれに対する極紫外線輻射場の効果を見ることにした。図はその結果を表している。上の二つの計算結果は、異なった円盤の柱密度(密度×厚み)のもので、左が柱密度が小さいもの、右が大きいものを表す。この二つの計算では輻射の効果をとりいれていない。どちらのケースも重力によって円盤が不安定になり、円盤の分裂が起きている。それに対し、下の二つの計算は、輻射の効果をとりいれた計算である。その結果、輻射による加熱が効いて、柱密度の薄い円盤は安定化し、重力による分裂が起きない。それに対して重い円盤では輻射の円盤内への侵入を遮蔽されるために、輻射がないときと同様に重力によって分裂が起き、その後の星形成へとつながっていくことが期待される。我々の計算によるとこの柱密度はおよそ1021 cm-2であることが分かった。これは典型的な円盤銀河の柱密度に対応しており、重い銀河ほど星の形成が起きやすいことを示している。

参考文献

Supernova & GRBs

超新星爆発の観測的・理論的研究

Supernovae

太陽の8倍を超える質量を持つ大質量星は超新星爆発という宇宙最大規模の爆発を起こす。その明るさは太陽の明るさの約10億倍(銀河に匹敵する)で光り輝き、爆発のエネルギーは原子爆弾の1030個分にも及ぶ。超新星爆発は数十日かけて明るくなり、その後ゆっくりと暗くなっていく。

超新星爆発は確かに宇宙では起こっており、多様な元素の起源であることから、その爆発メカニズムに関する理論的研究は40年以上も続けられているが、未だ解明されていない。一方で、超新星爆発・ガンマ線バーストの観測は新しい観測装置・観測技術によって増え続けている。

そこで超新星爆発の爆発の様子を流体計算・輻射輸送計算シミュレーションを用いて計算することで、超新星爆発がどのように観測されるべきかという点について研究している。また、すばる望遠鏡などの観測と協力して、宇宙で実際に発生した超新星爆発の爆発メカニズムが満たすべき条件を明らかにしている。

参考文献

ガンマ線バーストの理論的研究と超新星爆発との関係

太陽が一生(約100億年)かけて放出するエネルギーを数秒から数百秒の間にガンマ線で放出する現象が観測されており、ガンマ線バーストと呼ばれている。ガンマ線バーストは宇宙において最も明るい天体であり、我々が観測できている最遠の天体の一つ(約131億光年)である。その起源は爆発エネルギーの大きい超新星爆発であり、ローレンツ因子が100を超える超相対論的ジェットを伴う現象であることが明らかとなっている。

そこで、ガンマ線バーストと超新星爆発を同時に取り扱うため特殊相対論的流体計算シミュレーションを開発し、それを用いて、通常は無視されている相対論的ジェットと星との相互作用を研究している。動画は、星内部を相対論的ジェットが突き抜けていく様子をシミュレーションしたもので、星物質をジェットがかき分けて突き進んでいく様子を示している。

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Chemical Evolution

宇宙開闢から現在までの宇宙史および元素の起源

Chemical Evolution Fig

ビッグバンによって形成された直後の宇宙には水素とヘリウムと少量のリチウムしか存在しなかった。一方で現在の太陽・地球には私たちにとって欠かせない窒素、炭素、鉄といった多様な元素が満ち溢れている。この多様な元素はどこで作られたのだろうか?

その場所は星の内部であり、超新星爆発である。星は核融合反応、例えば太陽は水素をヘリウムに変換する反応、によって光輝いている。太陽の10倍を超える非常に重い星の内部では、ヘリウム、炭素、ネオン、酸素、シリコン、と変換されていき最終的に鉄が合成される。このように合成された元素は超新星爆発によって宇宙に放出される。

しかし、放出される元素は超新星爆発の様子によって異なる。そこで超新星爆発の流体シミュレーション、元素合成シミュレーションを駆使し、放出される元素の理論予言を提出し、実際に観測されている宇宙初期の元素組成と比較している。

太陽の300万分の1しか鉄を含まない宇宙で最も古い星が観測されている。図はその起源を示した図になっている。ビッグバン後、第一世代星が形成され、その中で重い元素が合成されていく。その星はいずれ超新星爆発を起こし、多様な元素を宇宙空間に撒き散らし、第二世代星を形成した。この第二世代星が観測された最も古い星である。このように、観測研究と協力して、宇宙で最初の超新星爆発の爆発の様子や宇宙にどのように多様な元素が満ち溢れていったのか(宇宙化学進化)を明らかにしている。

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