初代星の研究

我々はどこから来てどこに行くのでしょうか?これは人類にとっての根源的問いかけであり続けてきました。 生命の起源, 宇宙の始まり, 究極の統一理論の探求などはすべてこの文脈で理解されるもっとも古い問いかけです。 私たちの研究グループでは宇宙の歴史の中の極初期に生まれた星がどのような性質を持っていたのかを調べています。 生命の材料である炭素や酸素が宇宙で初めてこのような星で作られたと考えられるので, 物質としての我々の存在の起源を探る研究であるということができます。


宇宙で最初に輝いた星は初代星(ファーストスター)と呼ばれます。 宇宙の極初期には星の材料となる物質はとても熱かったと考えられるため、その熱エネルギーに対抗するために、 これらの星々は現在の太陽などの星に比べてはるかに重い星でなければならなかったと考えられています。一方でこれらの星々の正確な重さは、 図のように円盤が分裂する過程と、星からの紫外線が星の成長を止める働きによって制御されることが推測されていますが、 これまでの研究では正確な値が解っていません。星の性質を正確に推測することは、その後の宇宙の進化を知るために大変重要なことです。 私たちはこの問題にコンピューターシミュレーションの手法でアタックしています(下図)。 論文


初代の星々は重いものが多いためにその寿命は短く、数百万年で終わりを迎えたと考えられています。 長いようですが、宇宙138億年の歴史の中では瞬きのような時間です。重い星は、次の図のようにその死にあたって大爆発を起こし、 星の中で合成された物質を周囲にまき散らします。その周りの物質もやがて重力によって集まり、次世代の星の誕生へと進んでいきます。 このようにして初代星の中で育まれた物質(元素)は、世代を超えて受け継がれ、やがて我々の太陽系のような惑星系・ひいては生命の原料となったと考えられています。 我々のグループではこの第二世代の星の形成についても研究を進めています。 論文


初代星が生まれる時代にはまだ「銀河」と呼べるような大きな島宇宙はありませんでした。 そのかわり、銀河よりもずっと小さい”ミニハロー”と呼ばれる天体があり、その中で初代星が誕生したと考えられています。 このような初代星形成の現場となるミニハロー中に、 現在の銀河のような磁場や乱流があったのかという問題は、初代星の形成プロセスにも関わる問題で大変重要です。 我々の研究室ではこのような環境での乱流の成長(下図)、磁場の生成・増幅・散逸について理論的に調べています。 論文


初代星は極初期の宇宙で生まれるために、太古の宇宙の物質組成を反映しています。現代の標準的宇宙論では、初代星ができる時の宇宙には、 炭素や酸素などの元素は存在せず、ほぼ水素やヘリウムだけがあったと考えられています。したがって初代星にはそのような元素が含まれません。 一方初代星の質量が太陽の0.82倍よりも軽ければ、寿命が十分長いために、現在まで生き残ることができるはずです。 ところがこれまで水素ヘリウムよりも重い元素を含まない星は全く観測で発見されていないという大きな問題が知られています。 そもそも宇宙初期には軽い星が生まれずにもっと短命な重い星ばかりができたという説と、 軽い初代星が生まれても銀河の中を運動する間に銀河中の星間ガスが表面に降着して表面に重い元素が混入するという説が考えられています。 我々の研究室ではこの「化石初代星」の問題に関しても研究を行っています。 論文

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